博士課程在籍中のこと②
前回の記事で博士時課程在籍中の体験をご紹介するつもりが,説教みたいになってしまいましので,もう少し実体験を紹介しようと思います.
さて,進路として博士課程進学を考えている人の悩みの一つに,やはりお金の問題があると思います.これは博士課程の在籍中のお金の心配と,博士課程を修了してからの職の心配があると思います.周りの同期が就職していくと,自分はまだ学生していてもいいのかと悩んだりもします.でも,悩んでも仕方がないと思います.悩みを吹き飛ばすくらい,博士課程でしかできない経験値を積めばいいだけです.そうすれば,早めに就職した同期以上に充実した社会人を過ごせるはずです.
そうはいっても,博士課程の在籍中のお金はないと,進学したくてもできないという悩みがあると思います.でも,心配はいりません.博士課程で本気で学びたいという気持ちがあれば,国や大学が支援してくれます.その代表的なものを紹介します.
・日本学生支援機構による奨学金
これは,博士課程と言わずとも,学部生のときから申請すれば奨学金を貸与してもらえます.ただ,貸与ということで返さないといけない義務があります.返済については,結構世間では問題になったりしていますね.しかし,この奨学金,博士課程にもなると,学業成績優秀者での返済免除制度というものがあります.返済免除は全額,もしくは半額があります(情報が古いかもしれないので,詳細は検索してくださいね).この学業成績というのは,博士課程でいうと研究業績となります.投稿論文数や学会での発表件数などが優れていれば,免除となります.博士課程では毎月13万円弱支給されるので,贅沢な生活はできないとしても,十分やっていけると思います.就職して働いたとしても手取りで考えると,あまり変わらないかもしれません.
・日本学術振興会
これは,国がわが国の研究者の養成・確保を図るために,博士課程の学生を支援するというものです.ただし,誰でももらえるものではなく,競争的な資金となるため,1年に一回公募があり,自分の研究テーマについて申請書を書いて,採択される必要があります.審査がある以上,審査員に自分の研究が興味深いというように思ってもらう必要があるので,申請書の作成は大変だと思います.ただし,採択されれば月20万円程度の支援が受けられ,特別研究員という称号を与えられます.月20万円といえば,社会人の初任給の手取りくらいでしょうか.これに採択されれば,博士課程の在籍中のお金の心配はなくなるかもしれません.ただ,研究テーマと審査員との相性もあると思いますので,がんばっていればもらえるというものでもないのが辛いところかと思います.ただ,申請書にも研究業績を記入する欄もあるので,投稿論文や学会発表件数は多いに越したことはないと思います.
・大学独自の支援
卓越先端研究を目指している大学としては,若手研究者(の卵?)である博士課程の学生を十分確保して,研究を推進してほしいと思っています.そこで,大学としてもお金のことを心配して博士課程進学をあきらめることがないように可能な限りの支援を行っていますし,行おうと思っています.講義補助のTA(ティーチングアシスタント)だけでなく,研究補助のRA(リサーチアシスタント)としての雇用による給与があります.また,これは指導教員の資金力にもよるかもしれませんが,自分以外のテーマの実験の補助員としての雇用による給与などがあります.これらは資金が潤沢でないので,額としては多くないですが,日本学術振興会に採択されなくても,奨学金と大学の支援で日本学術振興会と同等程度にはなるかもしれません.私が学生のときは,恥ずかしながら日本学術振興会に採択されなかったので,奨学金と大学の支援で何とかなりました.大学の支援は結局は大学の資金力になってきますので,その資金力を強化するためにも,弊社は大学発ベンチャーで資金調達をしようと奮闘しています. また,大学としては博士課程の学生には研究者として大成してもらいたいとの思いから,海外の留学支援も行っています.大学にもよると思いますが,留学渡航費の全額およびその一部を大学が支援してくれます.私が学生だったころは,大学の海外派遣支援制度を使って,半年間カナダのオワタ大学というところに留学させてもらいました.大学入学時は,まさか自分が留学するなんて思ってもみなかったですが,博士課程まで進学したことで,貴重な機会を得ることができました.
以上,ご紹介したようにお金のことを心配して博士課程進学をあきらめるのはもったいないことを感じてもらえたでしょうか.お金は天下の回り物と言いますよね.何とかなります.
といっても,おそらく堅実な人だと,博士課程在籍中の心配がなくなったとしても,博士課程を修了した後の進路が不安だというかもしれません.確かに博士課程まで進むと,就職先の幅は狭まると思います.幅は狭まるというと不安を煽りますが,専門分野を活かせる就職先はいくらでもあると思います.今回は長くなりましたので,博士課程修了後の進路については,また後日にご紹介させていただきます.