大学教員が起業する方法③(法人登記~事業スタート)

法人登記が済めば,いよいよ事業スタートです.

事業目的に沿って,事業をスタートしましょう.

登記完了後にも提出が必要な書類がいくつか(税務署に提出する書類)あるので,忘れずに提出しましょう. 提出は区の税務署になるので,注意してください.(私は一度市の税務署にもっていってしまい,これまた二度手間になりました.)

社員に給与を支払うとなると,別途必要な書類がいくつか必要になってくるので,税務処理が大変です.おすすめは,まずは無給で事業をスタートすることです.大学との兼業ができていれば,会社からの給与がなくてもやっていけるところが強みです.

事業が軌道に乗ってくれば,税務処理は会計事務所にお願いすればいいんじゃないかな.それまでは,無給でがんばるしかないです.

事業をスタートするとは言っても,大学で特許出願した技術がそのまま製品として形になっていて,値段がついていないと,売るものがない状態です.

これは大学発ベンチャーに限った話ではなく,何か事業を起こして商売をしようとするときには,売るものもしくはサービスを準備しなければなりません.

大学での兼業ということを考えると,なんとか特許を活用したものを準備する必要があります.研究段階のものを製品化するまでに,よく死の谷と表現されるように,越えなければいけないステージがあります.これを越えない限り,まずものは売れないと思います.もし売れたとしても,不具合対応に追われる日々が続くことになります.

かといって,潤沢な資金があるわけではないので,外注するわけにもいかず,なんとか自分で製品レベルにするしかないかと思います.

私はソフトウェアのことしかわかりませんので,ソフトウェアに限った話をすると,多少の不具合が残っていたとしても,まずはリリースすることを考えて,売れるレベルにすることが重要です.そもそも初めから多数の顧客がつくわけはないので,使ってもらいながら不具合報告があれば,秒で対応する姿勢があれば問題ないと思います.

不具合は多少残っていてもいいといいましたが,そもそも製品レベルに達したかを判断するのは正直難しいです.

研究者の立場としてよくやってしまいがちなのは,研究成果を盛り込みすぎて機能がオーバースペックになって,逆にユーザがどうやって使えばいいかわからない状態になることです.

先端の研究成果をどや顔で盛り込みたいところですが,実用を考えたときにはそこまで必要なく,お手軽に使える方がいいということが多いです.ユーザニーズをいかにとらえて,やっていくかです.かといって,ユーザニーズを調査している時間もないかと思うので,そこは自分の感覚を信じるしかないです.

弊社のソフトウェアも機能を落として,解析時間を優先している部分が多々あります.まずは,ユーザに使っていただけるものを準備することが重要ですので.

不具合に秒で対応したり,自分の感覚を信じて製品を作っていくということを考えると,やはり最初は自分ひとりで頑張るしかないです.

一番その技術を知っているのは自分ですし,お客様から次々にくる不具合報告に本業に支障がない範囲で対応するには,寝食を削るしかないので,事業が軌道に乗るまではがむしゃらにやるしかないですね.

働き方改革が叫ばれ始めていますが,知り合いの会社経営者の話を聞いていると,どこも寝食を犠牲に働かれていますね.がんばりましょう.

あともう一つ,大事なことを忘れていました.大学の特許を活用する事業ですので,大学と特許使用に関する契約を締結しておく必要があります.事業で得た売り上げの一部を特許使用料として大学に支払う必要があります.発明者は自分であっても,特許は大学に帰属していますので,自分の持ち物ではなくなっています.

契約には,特許の独占使用か非独占使用があります.独占使用は,他の人が使いたいと言ってきても,使わせないようにできる契約で,非独占使用は他の人が使いたいと言ってくれば,使うことができます.独占使用契約にすると,独占的に特許を使用することができますが,当然使用料が高くなります.締結時の一時金も必要になります.

特許情報があったとしても,なかなか他社が製品にするのが困難(簡単にまねができない)と思われる場合は,非独占使用契約にするほうがいいと思います.使用料も低くできて,スタート時に資金がない場合には,締結時の一時金は結構大きいかと思いますので.

次回は,販路開拓について情報を共有いたします.

乞うご期待.